袋帯
帯は8寸2分(31センチ)、長さ1丈1尺(417センチ)以上。結び方は二重太鼓です。帯の端から端まで柄の入った「全通柄」、帯の6割部分に柄のある「六通柄」、前帯とお太鼓部分にだけ柄のある「お太鼓柄」の3種類の柄付けがあります。佐賀錦や唐織といった金銀を使った格調高いものは礼装用に、染のものや織でも軽めの柄のものはおしゃれ着用にと、幅広く用いることができます。
名古屋帯
幅は9寸(34センチ)、長さ9尺5寸(356センチ)以上。手先から胴に折って仕立ててあります。扱いやすいのが特徴で、結び方は一重太鼓です。柄付けは袋帯と同じく3種類。織、染め、刺繍、絞りなど様々な技法のものがあり、主におしゃれ着、普段着用に用いられます。紬や小紋などに。礼装には合わせません。
半巾帯
幅は4寸(15センチ)、長さはまちまち。だいたい8寸(300センチ)くらいあれば、胴に二巻きできますが、いろいろな変わり結びを楽しみたいなら1丈(375センチ)以上あるものが理想です。単帯や帯結びを使わず、自由な結び方が楽しめます。普段着の紬や小紋、浴衣、袴の下などに。訪問着などにも合わせられる、織や刺繍などの華やかなものがあります。
作り帯
お太鼓部分と胴に巻く部分が別々になっていて、お太鼓の形がすでに作ってあり便利です。江戸時代の制服女中が、ひとりで手早く結べる方法として考案したとされています。胴の部分を先に身体に巻き、お太鼓部分を背中に乗せます。付けてしまえば全くわかりません。自分の体に合わせて作っておけば、帯結びが簡単で気軽にきものが着られ、持ち運びもしやすいので旅行などにも重宝します。
お着物を一度全部といて、反物に戻してから、全体を洗いお仕立てし直します。
普段着に着ている着物を相当汚れるまで着てしまってから洗い張りすることが多いです。
汚れを落とすためには先に書いた「生け洗い」をすることが多いですが寸法を直すためにお仕立てし直したり、裾まわしや胴裏を取り替えるときには一度ほどきますので、洗い張りをしてからお仕立ていたします。
最近は皆様、身長や体系に比べて、裄(洋服で言う袖丈)が大分長くなってきています。
着物の裄は、腕を下斜め45度に伸ばして袖口が腕のくるぶしの所に来るのがちょうどですが、手を前で組んだりするとにょきっと腕が出ているように感じられるようです。
そのような理由から、裄を長め長めにとの御注文もありますが洋服のときは、手の甲にかかるくらいの丈で着ることもありますが着物の裄はあまり長くすると、ドアのノブや取っ手に引っかけやすくなりますので先ほどのちょうど良い寸法にしておくのがよいでしょう。
いただいたお着物を着る時には、裄が足りないこともあります。その時は、袖付けをほどいて元の仕立ての筋を消し、裄の寸法を伸ばして袖付けを仕立て直します。
この時注意することは、裄の縫い込が伸ばす分だけあるかどうかと伸ばした跡がきれいに消えるかということです。縫い込みは指先で触れば、どのくらいあるかすぐ分かるはずです。
仕立ての跡は、縫い込みの外と内でが色が変わっていることや筋がきつく残っていることなどがあります。
生地や色柄で直しやすいものと、難しいものが有りますので少し試しに袖付けをほどいてみて、確認してからほどきます。
裄を伸ばすときのもうひとつの注意点は同じ裄寸法でも、人により肩巾と袖巾のバランスが違うこともあるということです。
このバランスが着物と襦袢であまり違うと振りや身八つから襦袢が出たりすることがあります。
ぴったり合っていても、表の生地の素材や地風で襦袢が出ることもありますが、あまり気になるときは、更めて寸法を見てみるとよいでしょう。
着物は身丈が長い分には融通をきかせて着ることができます。
お母様の着物や知人からいただいたお着物を着るときに一番困るのは身丈の足りないときです。
以前は着物は(特に普段着は)短めに皆さんお召しになっていました。
最近ではたとえ普段着といえど着物を着るときにはドレッシーな雰囲気にお召しになりますので、すこし長めのお召し方が多いようです。
また、最近の女性の体系は昔に比べ、足が長くなりウエストの高さが高くなってきています。そのため、同じ身長でも腰紐の位置も上になりおはしょりが長めに必要になりますので、身丈も長めに要るようになります。
「娘と同じ身長なのに、娘が着ると身丈が足りない。」といったお話しもよく伺います。
腰紐の位置を低めに締めれば、短い着物でも着ることができますがよっぽど着慣れた方でないと、着にくいはずです。
短めのお着物は、一度ほどいて筋消しか洗い張りをしてから身丈を長くしてお仕立てし直します。
この時注意が必要なのは、まず着物に縫い込み(内揚げといいます)があるかどうかを確認することです。着物をほどいて仕立て直すときは一番裾は生地の目もみだれてきていますので5分から1寸(2~4センチ)ほど切り落として行きます。そのため、内揚げが無い着物は仕立て直す度に身丈が短くなって行くことになります。
表の内揚げが十分にあるときには、裏を見て胴裏と裾回しの縫いしろが表と同じように十分あるか確かめます。延ばす丈の分と、裾を切り落とす分が縫いしろの中に無ければなりません。
それが足りないときには、胴裏か裾回しを取り替えるか、胴裏と裾回しのあいだに、足し布をして仕立てます。
表の内揚げが十分でないときには、胴に足し布をして身丈を延ばしてお仕立てします。
2寸(7~8センチ)位の伸ばしですむときは身八つ口の少し下、ちょうど帯の胴巻の下に隠れる所に足し布をしてお仕立てします。
帯の下に隠れますので、きた時に外からは見えませんので表と違う色の生地でも大丈夫ですが、表の色に合わせて短い生地を染めて足すこともあります。
上の足し布の仕方ではまだ短い場合は、衿先の少し上、着物のおはしょりの下に隠れる位置に足し布をします。この足し方だと4寸(15センチ)位の長さを足すこともできます。
この場合は、着方や紐の位置でおはしょりの出し方がずれると足し布が見えることもありますので、あらかじめその方の腰紐の位置とおはしょりの位置をしっかり決めてから足し布の位置を決めます。
小紋の着物などは、着物で着るのに飽きてしまったり派手目になってきたりしたら、道行きコートや羽織にお仕立てすることができます。
袖と身頃はそのまま使いますが、コートの立て衿は着物の衽を使ってお仕立ていたします。
通常コートの立て衿は一反巾の生地を半分におって仕立てておりますが着物の衽は半巾に裁ってお仕立てしてありますのでコートに仕立て直すときは裏地を当ててお仕立ていたします。
外から見たときには分からないように仕立てますが実際は衿は本来のお仕立てと異なります。
もう着ないと思っていた着物でも、以外と生かせる道もありますので無駄にしないで、色々と検討してみてください。
染め直しには大きく分けて「もとの染めを生かしながら直す方法」と「色を抜いて白生地に戻してから染め直す方法」が有ります。
もとの染めを生かしながら染め替えるには、
①もとの柄などを染まらないように糊でふせた上で染める方法と
②全体に上からちがう色をかけてしまう方法があります。
①の方法は、もとの柄を生かせて地色だけ替えることができますが以前に比べると手間の代が大変高くなり、一から染めるくらいの費用がかかることもありますので、最近ではだいぶ少なくなっています。
②の方法は、生地の上から違う色を全体にかけてしまいますので手間や費用はそれほどかかりませんが、出来上がりの色合いは実際に染めて見ないとはっきりと分からないため、思ったとおりに染めるのが難しいところがあります。また、柄の上からも色がかぶってしまいますので、地の雰囲気以上に柄の雰囲気は変わってしまいます。
この方法では、染物にするより、白やベージュ、グレーといった薄色の紬に紺、緑、紫といった濃い目の色をかけて、染め直すことが実際には多いです。
絣の白めはきえてしまいますが、黄変や色変わりを隠したりもできます。
染め替えで一番多いのは、一度もとの色を抜いて白生地に戻す方法です。きれいに色が抜けていれば、無地に染め直すこともできますし、少々前の色柄が残っても、小付けの小紋柄などを染めればあまり目立たなくなります。
染め替える時の注意点は、色や柄以上に、生地のすれなどが染め替えると目立ってくる点です。白くきれいに色が抜けても生地にすれなどの傷があると、染め直してから色のむらや白っぽいすれになって出てきます。一度ほどいて色を抜いてから駄目でしたでは、勿体ないので事前に染め直しがどの程度可能か、よく職人さんと相談してからしなければなりません。
場合によっては、生地の裏と表を逆にして染め直したりも致しますが綸子の生地の場合は、雰囲気が変わることもあるので注意しながらいたします。
生地から色を抜くときは、どうしても少々は生地を痛めることにはなります。
もとの生地にもよりますが、やはりしっかりした生地のお品は染め替えしても良い仕立て上がりとなりますので、お買いお求めになる時に、まず生地のしっかりしたお品を選んでおくことは永くお着物を大事にする上で、大事なポイントとなります。
また、丈を長く仕立て直すときには縫い込があるかどうかなどをちゃんと調べてから加工にかかるように気を付けなければなりません。
ご結婚式の直前になって、黒の江戸褄に白い点々と付いてしまいあわててお持ちになる方が時々あります。
さあ着ようと思って久振りに箪笥から出すと、一面に白い斑点があってびっくりされてしまうのです。
湿気っぽいまま長い間しまっておいて、カビが白い点々となって出てきているのです。いつも着るわけではなく、色も濃いために江戸褄や喪服はこのカビの汚れが目立ってしまいます。
これは生け洗いして水を通して洗えば大抵は綺麗になります。
生け洗いは多少お時間もかかりますので、念のために着用が決まっているときはしばらくまえに一度出して、見ておいたほうがよいです。
また長い間着ないでいて樟脳の匂いなどが取れなくなってしまった時も全体をお洗いすることでずいぶん良くなります。
着た時に十分風を通してからおしまいいただくのが、一番良い予防法です。
江戸褄や色留袖には昔の襲着の名残で比翼が付いています。
比翼は衿、袖口、振り口、衽から裾にかけてと外から見える部分に、白い羽二重で襲着風にもう一枚着ているようにお仕立てしてあります。
白い羽二重で仕立ててありますので、汚れやすいところでもあります。お着物と同じように袖口は汚れが目立ちやすく、染み抜きを時々していてもなかなか汚れが落ち切らなくなってきます。
汚れが落ち切らないときは、袖口の比翼を新しく取り替えてしまいます。袖口だけ新しくなって、振り口と白さが違って気になる時には振り口も一緒に取り替えます。
袖や振り口は独立して付いておりますので、取り替えることもできますが衿の比翼は衽や裾の比翼につながっておりますので、そこだけかえることもできません。その時には、白い羽二重を衿の比翼の上からかけてしまうことがあります。
比翼の衿は着物の衿と同じように、主衿と共衿がありますが上からかけるときには各々にかけることはできないので、全体に新しい羽二重をかけてしまいます。
主衿と共衿の境がなく白い伊達衿のようになり、多少変則的なお直しの仕方ですがあまり目立たないのと、衿元でお顔に近いところが綺麗な白になりますのでお召しいただくとだいぶ綺麗になりますので、この方法をとることもあります。
羽織とコートの大きな違いは、衿の形とともに脇にまちがあるかどうか、という点があります。
羽織の衿は衿先から反対の衿先まで、並巾のまま折って使ってありますので広げて裁てばコートの立衿として使えます。
また羽織にはまちがありますが、コートには無いので、やはり羽織からコートのお直しはできますが、逆はお仕立てができません。
お直しする時の注意点としては、先ほど書いたように折ってあった衿を広げて使いますので衿の折れ目に汚れや筋が残って無いかということです。
羽織のままだと目立ちませんが直すと目立つ時もあるので注意が必要です。
以前は短めの羽織をお召しになることも多かったので羽織の丈を延ばしてコートやもう一度羽織にお仕立て直しということもあります。
丈を延ばす時には、身頃の引き返しと、羽裏の縫い込みが十分に有るかが大事ですが身丈は十分でも、衿の縫い込みが無いこともありますので十分に注意してください。
ほどいてしまったは良いけれど、結局寸法が変えられないと言うことになってしまいます。
羽織の裏を変えることでイメージを変えたり、身頃の前後を変えて紋付き羽織の紋を隠すことなどもできます。